新型コロナウイルスについて、これほどまでに影響が大きく、世の中が未曽有の混乱に陥ることを予測した人は少なかったかもしれません。
緊急事態宣言による飲食店の営業時間短縮、外出の自粛などで経済の沈滞が続いています。
こうした中で、消費者の行動もオフラインからオンラインへと変化し、マーケティングの手法もSNSを通じて自社の製品やサービスを宣伝するデジタルマーケティングが主流になりつつあります。
コロナで消費者の動きはどう変化した?
新型コロナウイルスの影響について、Googleは「これからにそなえるデジタル マーケティングガイドブック」のなかで、
「世界が混乱し、私たち生活者の習慣や購買行動が大きく変化。そして、そのことにより、ビジネスを営む企業や従業員、顧客までが新しい課題に直面している」と解説し、危機感を強調しています。
実際に消費者の動向がどう変化したかを見ていきます。
リアル店舗よりオンラインショッピング
新型コロナウイルスの感染予防でのために緊急事態宣言がたびたび発出され、人と人の接触をなるべく避けるために、飲食店の営業時間短縮、テレワークや在宅勤務、時差出勤、イベントの自粛などが呼びかけられています。
これらにより、まず外出する時間が減ったことで、テレビや、スマホ、パソコンによるインターネットメディアを閲覧する時間が格段に増えました。
百貨店や専門店の中には閉店していたところもあり、スーパー、コンビニなどは開いていても、外に出たくない人が増えてリアル店舗より、オンラインショッピング、オークションの利用が多くなりました。
今やオンラインで何でも手に入りますので、電気製品、日用品だけでなく、食料品などを購入する人も増えたようです。ウーバーイーツの普及で宅配ピザ、弁当などの需要も伸びています。
「おうち時間」を満喫する「巣ごもり消費」
学校も休校になったことで、家族が家で共に過ごす時間が増え、「おうち時間」を満喫するために、高級スイーツや高級料理をオンラインで購入したり、ゲーム機器を購入したりする「巣ごもり消費」も大きく伸びました。
現在の生活に必要な情報やコンテンツは、ネット上で探すようになり、オンラインでの新たな人とのつながりや関係性を模索する人も増えているようです。
オンライン会議やバーチャル展示会が隆盛
経済界を見ますと、オンライン会議やオンライン面接の機会が増え、イベントやセミナーの開催粛により、Webセミナー(オンラインセミナー)やバーチャル展示会という従来あまり見られなかった形態の催しが各所で開かれています。
営業活動については、取引先を訪問して会って話をすることができなくなり、新しい営業方法、費用対効果のある方法を検討する必要に迫られています。
企業は広告出稿を削減
企業の広告出稿については、費用対効果が見えにくい広告は、経済情勢が不透明な時期には出稿が抑えられる傾向があります。
今回の新型コロナウイルスの影響も同様で、日本はもちろん世界中で広告出稿量が減少しています。赤字が見込まれる電通の本社ビル売却の話が出ているほどです。
マーケティングについては、ユーザーターゲットや戦略だけではなく、広告の出し方などのこれまでの予算計画を一から大幅に見直すことが必要でしょう。
大都市に行く人が減少
ヤフーが自社サイトの乗換案内などで調べたところ、緊急事態宣言で全国すべての小学校、中学校、高校などで休校要請が発表された2020年2月27日以降、大都市ターミナル駅に行く人が大幅に減少したそうです。
一方、郊外の駅と大都市ターミナル駅を比較すると、例えば郊外にある町田駅と、乗降者数1位の新宿駅を比べてみると、町田駅を目的に設定した人の数は、新宿駅を目的にした人ほどは減りませんでした。
つまり、大都市に行く人が、郊外に行く人に比べて減少傾向が大きかったということになります。
コロナで縮小したマーケティング施策と増加したマーケティング施策
こうしたコロナの影響による消費者の動向を考えますと、オフラインでのマーケティングより、WebサイトやSNSを通じて自社の製品やサービスを宣伝するデジタルマーケティングが重要になってきます。
オフラインのセミナー、展示会出展が縮小
株式会社ベーシックが、「新型コロナウイルスの感染拡大によるWebマーケティング活動の変化」について2020年6月にアンケートを取ったところ、
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い縮小したマーケティング施策としては、「オフラインのセミナー/展示会出展」が45.6%で最多となったそうです。
緊急事態宣言による自粛要請で、大人数を収容できる施設は借りられなくなり、さまざまな業界の展示会は軒並み中止となりました。イベントを企画する企画会社も多大な影響を受けたようです。
新聞、テレビ、雑誌などの広告が減少
また、同社のアンケートで、コロナ禍において縮小したマーケティング施策の2番目は「リスティング広告、ディスプレイ広告」でその次に「外部メディア出稿」が縮小されていたそうです。
外部メディアとは、主に新聞、テレビ、雑誌などの広告で、先行きが不透明ということで、広告の出し方も難しくなり、紙媒体などの広告経費が削減されたと言えます。
Webサイト、SNS広告を強化
一方、同社のアンケートでは、強化したマーケティング施策としては、「Webサイト、LP改善」が39%と最も多く、
次が「SNS広告(Facebook、Twitter、Instagramなど)」の34%、「オンラインのセミナー/展示会出展」の28%となっています。
コロナ禍におけるマーケティングは、オフラインの縮小とオンラインの拡大を選択する傾向が顕著に表れているようです。
デジタルマーケティングが伸長
明らかに増加したマーケティング施策としては、デジタルマーケティングが挙げられます。
デジタルマーケティングとは、オンライン上で行うあらゆるマーケティング活動の総称ですが、単なるネット上の広告だけを指すわけではありません。
ユーザーの購買、行動の履歴など、オンライン上のさまざまなデータを集めて分析し、それに適したマーケティングを行う方法です。
緊急事態宣言により訪問して行う営業活動が制限される中、オンラインによりワンストップで行えるデジタルマーケティングは進捗しました。
デジタルマーケティングに関するサービスの市場は確実に伸長しています。IDC Japanによると、2019年は約4200億円でしたが、2024年には約5300億円になるという予想になっています。
コロナ禍のなかでは、さらに大きく伸びる可能性を秘めているようです。
小売事業者の売り上げが減少、広告費も減少
(出典:Merkle Q2 2020 Digital Marketing Report Released)
しかし、上記画像のMerkle社の「デジタルマーケティングレポート」によると、新型コロナウイルス拡大の影響を大きく受けた2020年4-6月にコロナがデジタルマーケティングに与えたマイナス面も明らかになっています。
リアル店舗に来店していたユーザーがオンラインに移動したため、広告クリック数とサイトへの流入数はどんな企業でも増加しましたが、小売事業者の売り上げが苦境に陥り、
広告をアップグレードしなかったため、クリックあたりのコストは減少、広告の売上げも減少したそうです。
こうした点も踏まえながらマーケティング施策を考えなければなりません。
コロナ禍でやるべきマーケティング施策
マーケティングは、調査、実践、管理などを段階的に実行していきます。デジタルマーケティングではWeb、オンラインやデジタル技術を駆使して、これらを効率良く進めます。
SNSを活用し、情報を配信して拡散
デジタルマーケティングでは、まずデータを収集し、ユーザーの購買、行動履歴などを分析します。そして、ユーザーからのニーズなどのフィードバックを受けて、個々のマーケティングを実現できます。
また、デジタルマーケティングは即効性が最大の特徴で、Twitter、InstagramなどのSNSを活用してリアルタイムに情報配信を行えるため、拡散による波及効果が見込まれるようになりました。
マーケティング内部のコンテンツの見直しや整理
コロナで世界経済が大きな影響を受ける状況においては、単に商品やサービスを売るだけではなく、ユーザーが必要とするサポートを与えて、ユーザー目線のマーケティングを行うことも大切です。
また、企業がテレワークを進めており、どのようにしてデジタルコミュニケーションの機会を創出するかを考えながら、デジタルマーケティングの内部のコンテンツの見直しや整理を行うことも必要となります。
広告を出すメディアをよく吟味
デジタルマーケティングは、外出自粛のなか、オンラインによる大きな効果が見込まれますので、従来は興味を示していなかたった企業も、取り入れるケースが増えてくるでしょう。
より成果を上げるには、単なるユーザーの行動データの収集、分析だけでなく、信頼あるメディアへの広告の出し方が重要です。
コロナにより、さまざまな情報が氾濫する中で、ユーザーは確かな情報を求めていますので、広告の出し方、載せるメディアをよく吟味していきましょう。
若い世代に支持されるInstagram
広告を出稿するSNSとしては、かつてはFacebookが勢力を伸ばしていましたが、最近は特に若い世代に支持されるInstagramが広告出稿額、広告が表示されたインプレッション数などでFacebookを上回っています。
Instagramは、同じく若い世代に人気のLINEやTwitterなどよりも勢いが感じられます。
Web接客ツール、チャットボットなどを活用
新しいマーケティングのツール、サービスとしては、HPを訪問したユーザーに対し、実店舗のように細かなサポートを行う「Web接客ツール」、
自動的に対話できる会話プログラムの「チャットボット」、ユーザー開拓におけるマーケティング活動を可視化・自動化する「MA(マーケティングオートメーション)ツール」などがあります。
それぞれのメリット、デメリットをよく吟味しながら導入し、マーケティングに役立てましょう。
動画などコンテンツマーケティングも有効
ツールの導入以外に力を入れるべき施策としては動画制作、動画広告配信などのコンテンツマーケティングも有効です。
動画を使ったデジタルマーケティング
外出を自粛する人が増加する状況において、娯楽や教育などに関するさまざまなコンテンツが配信されています。
YouTube では、掃除、料理、室内スポーツなどを自撮りし、見る人も一緒に行うことができる動画の視聴が増加しています。
ただし、自粛が求められるなかで、大げさな発言や大音量の音楽などは時流に合わないかもしれません。
対面でのコミュニケーションや集会を呼びかける内容も不適切で、人々に役に立ち、共感を呼ぶようなメッセージを盛り込みましょう
ネットで販促活動を行うデジタルプロモーション
外出の自粛やリモートワークをおこなう企業が増えており、ユーザーに出向いての営業活動が難しくなっています。こうした厳しい環境のもと、広告の出し方などの新しいマーケティング手法が要望されています。
そこで、営業活動、展示会出展などのリアルな接点に関する販促予算を、ネットで販促活動を行うデジタルプロモーションに振り分ける企業が増えているようです。
販促のため、動画を公式Instagramで配信
デジタルプロモーションとは、企業が商品・サービスの購買に結びつけるために、ユーザーの購買データやネットを活用して行うあらゆる販促活動のことを意味します。
デジタルマーケティングは、販売戦略全体を表しますが、そのうちの一つが販促つまりデジタルプロモーションということになります。
双方向のコミュニケーションが行えますので、ユーザーの声を拾いやすくなるようです。
化粧品メーカーがヘアメイクテクニック、メイク道具の手入れ、ハンドケアマッサージといった情報を動画により公式Instagramで配信したりしています。
こうした情報、テクニックを、新しい広告の出し方として、企業のプロモーションに取り入れる動きが見られます。
ネット上での動画広告への要望が増加
ヤフーでは、各種データやテクノロジーを活用してマーケティング活動の意思決定を支援する「消費者理解支援・広告効果分析」を行っています。
これがさまざまなメディアを駆使したプロモーション施策を実行している広告クライアントによく利用されています。
コロナ禍で、プロモーションを控えているクライアントに、テレビCM、交通広告、チラシなどを提案していますが、やはり最近はネット上での動画広告への要望が多いようです。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、ネットメディアに接する機会が増え、リアル店舗よりオンラインショッピングの需要が増え、
企業は訪問による営業、展示会出展などが行えなくなり、従来のマーケティング方法が通用しなくなっています。
さらにユーザーの消費行動も大きく変化し、それに伴う形でデジタルマーケティングが伸長しつつあります。
広告出稿に関しては、信頼できるメディアを吟味することがとても大切で、若い世代に支持されるInstagramへの広告出稿など、自社の製品やサービスを宣伝するうえで一番効果的なプロモーション活動を施策することが必要です。
Web接客ツール、チャットボットなどの新しいマーケティングツール、動画によるコンテンツマーケティングなども活用し、コロナ禍のなかでも売り上げを伸ばせるマーケティング戦略をしっかり立てましょう。