SNSには利点だけでなく炎上というマイナスの点もあります。今まで想像もしないような自身の全てを否定される書き込みに、恐ろしさを感じることもあります。
炎上のリスクと企業の担当者はどのように向き合えばいいのか、基礎となるポイントを整理します。
ネット社会が日常的になっていく中で、今までと一番変化したことはSNSの発達により「誰でも手軽に発信できる」ことではないでしょうか。
個人も企業もその利点を活かそうと様々な利用法を考えていきますが、利点だけでなく自身の存在を潰しかねない炎上という恐ろしい一面もあります。
炎上に巻き込まれない対策、また巻き込まれた時にはどのように対処することが大切なのかしっかりとポイントを押さえておきたいものです。
何故SNSで炎上してしまうのか?
SNSが普及すると「炎上」というワードが急速に世間に広まりました。
これはSNSが広まってから始まったことなのでしょうか。ある点では正解ですが、見方を変えれば少し違う答えが浮かび上がります。
SNSが発達する前には企業で不祥事などがあった時、消費者などは企業の問い合わせ窓口などに直接クレームの電話をしたり手紙を送ったりしていました。これも一つの内容に相当な数のクレームが入ることがあり、今の言葉を使えば炎上にあたるのではないでしょうか。
ただSNSの炎上との違いは相当な数の電話ではありますが、クレーム電話をした人と企業担当者、多くても話を聞いた知人ぐらいで想像の範囲を超えた第三者が関わってくることはありませんでした。
「モノ申したい」は今に始まったわけではない
自身の主張を伝えたいという心情は多かれ少なかれ誰にでも思い当たる部分ではないでしょうか。
良い事、苦々しい事それよりももっと軽い「今の自分」を伝えることといった欲求を手軽に満たすことができるツールとしてSNSが発達するのは驚くことではなく、元々人間の持っている欲求に訴えるものだと言えます。
SNSの発達の以前であれば、企業に対するクレームであれば
①人に主張を伝えたい。
②聞いてくれる人を探す。
③直接当事者に伝えて「改善して」もらおうとする。
④電話を掛ける、若しくは手紙を書く。
⑤回答を待つ。
どうしても「言いたい」時はこれだけの手間をかけて相手に伝えていました。
それでも自身の期待した回答がこない、もしくは反応が無ければ自身の主張が通じるという欲求が満たされず、さらに悪循環を生んでしまいます。場合によってはそれでも主張をやめられない時もあります。
主張を言いたい人の救世主「SNS」
SNSの普及以前であれば言いたいことがあっても周囲に伝えるか、対企業に対してであれば上記のような面倒な手順を踏まなければならなかったのが、SNSではただ画像や文章を送信するだけで多くの人に伝える機会ができます。おまけに自分の投稿に対して「いいね」やコメントなど様々な「声」を聞くことができます。
こうして欲求を簡単に満たしてくれるのがSNSという訳です。
そしてこの傾向は世の中に不安な要素が広まるとさらに炎上する件数は増えてきます。
2020年4月、緊急事態宣言などで世の中が不安定な状況になった時期には前年の同じ月の72件に対して245件と炎上の件数は一気に3倍以上増加しています。
参照:データで見る「ネット炎上」 炎上事案はどれだけ増えたか?メディア側の変化も影響 |ビジネス+IT(sbbit.jp)
個人だけじゃない、企業も「言いたい」
それでは個人だけが「言いたいこと」があるのかと言えばそうではありません。
企業も自社の商品を知って欲しいと思うのは当然で、何か問題が起きれば釈明したいと思うこともやはりあります。ただ問題は企業とは個人が集まってできているということです。
会社にも当然ルールはありますが、守られるかどうかは犯罪に匹敵するようなものでない限り、個人のモラルに頼る部分も多くなります。そしてSNSが発達するとますます企業のルールの徹底と個人のモラルが重要となってきます。
「言いたい」ことがあるのは自分だけじゃない
言いたいことが容易に伝えられるようになるのは自身だけでなく、当然、他の人にも同じように機会が増えてきます。
そこで今まで想像もしなかった相手から誹謗中傷を受けることもでてきてこれが炎上となっていきます。話をしたこともなければ顔も見たこともない多くの人が突然、自分を敵視すれば、気持ちに大変な混乱を招くことは想像できます。それは企業も個人の集合体なのですから、同じように担当者の焦りへとつながっていきます。
それでは実際に企業に起こった炎上にはどのようなものがあるのかいくつか例を挙げてみます。
企業におけるSNSの炎上事例
SNSの炎上の事例は挙げればキリがないほど存在します。
ほんの一例ですが今まであった事例を紹介いたします。
日本テレビ 情報番組での差別的な発言
2021年3月、日本テレビの朝の情報番組でアイヌ民族に対する差別的な発言があったと関係団体から講義があり、SNS上でも投稿が相次ぐことになりました。
アイヌの女性の人生を取り上げた内容で、お笑い芸人の方が謎かけをした発言に差別的な意味が含まれていたものが、そのまま放送となり、後日、同番組で謝罪をするという事態になりました。謝罪内容は番組では差別的な内容が含まれていることに対しての認識不足と確認不足であったことを認めたものでした。
現在ではテレビ離れ、ネットが主流と言われてはいますが、実際、SNSで交流しながらテレビを見ているネットユーザーも多くいるので、テレビで流れたことがSNSでさらに早いスピードで広がっていく恐れもあります。
自社がニュースや番組で取り上げられるタイミングには、放送されている内容の確認をしておくことは当然必要ですが、それと同時にSNSの反応をチェックしておくことも忘れないようにしておきたいものです。
参照:日テレの「アイヌ差別発言」問題 北海道のアイヌ民族集落の人々はどう受け止めたのか
キリンビバレッジ 「午後の紅茶」商品PR
「#午後ティー女子」のハッシュタグをつけて「ともだち依存系女子」「モデル気取り自尊心高め女子」「仕切りたがり空回り女子」など「あるある」的なネタをイラスト付きでTwitterに投稿をしました。
当然、PRのための投稿ではありますが女性蔑視と受け取られ炎上したため投稿を削除してお詫び文をTwitterに投稿しました。
商品の宣伝はさわやか、穏やかだけでなく時にはエッジの効いたものも必要ではありますが、このようなタイプの宣伝は共感と同時に反感を受けることも多数あります。
ネガティブな印象を持たれかねない宣伝を企画する際には、インパクトがあるや好意的に受け取られるの境界線と発信する慎重さ、その時期の世の中の動きなどが読むことが必要でかなり高度な手法と考えた方がいいでしょう。
参照:午後の紅茶によるPRイラスト炎上騒動 ネットPRで重要なポイントは? – ライブドアニュース (livedoor.com)
韓国苑 アルバイト従業員の悪ふざけ動画
2021年4月、大心産業が運営している焼肉店の大学生アルバイト従業員4人が厨房で不衛生な行為をした動画をインスタグラムに投稿するといういわゆるバイトテロが起こりました。限定公開ではあったが拡散され、インフルエンサーが拡散したために大きな問題となりました。
大心産業ではこの従業員を懲戒解雇処分としお詫びの文章をホームページに掲載しているが、クレームの電話対応に追われるなど業務に支障をきたす状態になりました。
本人たちが限定公開しようとも拡散は止められないという実例にもなります。
一時期、このようなバイトテロのニュースが多く取り上げられ、その度に投稿者自身が悪ふざけですまない罰を受けているにも関わらず、完全に無くすことができない難しさを表しています。
参照:焼き肉「韓国苑」大学生バイトが不衛生行為…動画に批判 運営会社が解雇し謝罪「顧問弁護士と相談」(J-CASTニュース) – Yahoo!ニュース
ユナイテッド航空 定員オーバーに対する対応
2017年4月、アメリカのユナイテッド航空で定員オーバーの機内で、どの乗客を次の便へ振り替えるか決めるために用意されたくじに当たってしまった男性医師を強制的に機内から引きずりおろす動画が投稿され、ショッキングなニュースとなりました。
この男性が中国人であったことで人種問題ともつながり、当時、大変な問題となりました。これは同じ機内に搭乗していた乗客が撮影したものを投稿したもので、その動画の強烈な印象により一気に広がっていきました。
この事例は定員オーバーで予約を取ってしまっているなど、日本の企業では中々起こりえない状況ではありますが、SNSの炎上の投稿の火種は公共の場であれば対象者が投稿するだけでなく、そこにいた人物が投稿する場合もあり、バイトテロと同様、動画は文字以上に強烈な印象を残します。またSNSは一国だけでなく世界中にユーザーがいるため、人種問題や宗教、セクシャリティに関する内容の炎上事例は数えきれないほどあります。
このような事からSNSを運用する際には広い視野を持って対応していく必要があります。
参照:企業SNSの炎上! コンプライアンス問題!? 事例から学ぶ対策とは? | 誹謗中傷・ネット削除ガイド (hibou-tyusyou.help)
その他の事例
銀行の従業員が家族に顧客である芸能人の住所などを話してしまい娘がTwitterに住所を教えてもらったことなどを投稿し、プライバシーの侵害として炎上しました。銀行が翌日に正式文書で謝罪をすることになりました。
担当者が個人のアカウントで投稿するはずの内容を誤って企業のアカウントで投稿してしまうといった事例もあります。また関係のない第三者が関係者になりすまして投稿したものから炎上するといったケースもあります。
個人情報を守る、プライバシーを守るといった言葉は聞かない日がないほど徹底されていても残念ながら情報漏洩は無くならないのが事実です。
企業以外の投稿の事例
この他にも色々な炎上の事例があります。
記憶に新しいところでは煽り運転の事件の加害者の映像をみた人が似たような姿の女性を特定し加害者として投稿したものが拡散されたことがありました。
この女性に対して非難をする投稿がされ炎上したが、後でこの女性が関係なかったことが判明、女性は投稿した人物、この投稿を広めた市議らを訴え名誉棄損が裁判で認められています。これは投稿した人だけでなく、事実の確認が取れていない内容を広めた人物にまで名誉棄損の対象となる事例ともなりました。
またコロナ禍において実家に帰省中に感染が確認されているにも関わらず、長距離バスで東京に戻った女性のニュースが流れると、SNS上で人物が特定され、アカウントが炎上したこともありました。
人物を特定する動きをするSNS利用者は後を絶たない
この2件の事例はどちらもアカウントなどから個人を特定するSNS利用者がいることをあらわしています。時には未成年犯罪者がAなどといった報道がされているにも関わらず、SNS上では卒業写真などが投稿され人物が特定されているケースもあります。
住所、名前などを投稿しなくても人物を突き止めようとする人は後を絶たないわけです。
炎上してしまった場合の対応策
自身(自社)が炎上の当事者になってしまうと、動揺と焦りを感じてしまうのは仕方のないことです。人々が世間に不安を感じる時期が続けばさらに炎上が増加する可能性があります。
炎上を広げないための対策を立てる必要がありますが、まずはこのような事態に陥っても焦らないために「炎上」というものがどういうものなのかを知ることから始めましょう。
SNS上の誹謗中傷する人とはどういう人
2016年の調査で過去1年以内に炎上に参加したネットユーザー全体の0.7%ほどになります。2019年には炎上の件数は1200件と増加傾向にあり、約1日3件は炎上が起こっている計算になります。それでも炎上に参加したユーザーの数はユーザー全体の1%になるかどうかという人数です。
現在ではさらに炎上の件数は増加しているので、若干、数字は変わってきているかもしれませんが、多くのユーザーと思える書き込みも実際に数字で表せばそれほどの数では無いことがわかります。
参照:ネットの誹謗中傷、参加するのは「ネットユーザーの1%未満」 コロナで増加、その実態は? 山口真一氏に聞く – 弁護士ドットコム (bengo4.com)
炎上の仕組み
それでは炎上はなぜ起こるのでしょうか。
ネットユーザーはかなりの人数いますから、その1%ともなればそれなりの人数になることは確かです。しかし実際のところは一人で複数書き込んでいるケースが大半です。1度だけ書き込みをするという人もいますが、1人で10回以上の書き込みをする人、また驚くことに場合によっては一人で50件以上の書き込みをする人も複数いるほどです。
ノイジー・マイノリティーという言葉がありますが、これは「声高な少数派」という意味をもっており、人数は少数ではあるが声高に主張を繰り返すため大変大きな存在になってしまっているということを表現しています。
なぜ誹謗中傷する人は書き込みをするのか
2016年の調査では書き込みをした人の約半数が「間違っていることをしているから許せない」という正義感から来ています。次に「企業への失望」「楽しいから」といった理由が約15~20%になります。
多くの人が自身の正義感から書き込んでいるわけですが、少なからず「楽しいから」といった本来のクレームとは違う理由で書き込んでいる人もいるという訳です。
また正義感から書き込みをする人に複数の書き込みをする人が多く、「相手の間違いを正していこう」という意思を持って書き込んでいると考えられます。
「炎上」を知ろう
「炎上」をしてしまうと企業の担当者は数人、それに対してSNS利用者の多くの人が非難をしているように感じてしまうかもしれません。恐怖や動揺、そこからくる焦りから無理に解決をしようとしてしまうかもしれません。
しかし実際は上記のような人の行動の集まりが「炎上」です。ただ多くの批判的な書き込みに慌てたり、焦って対応したりするのではなく、こういった「炎上」の正体を知った上で対策を立てていく必要があります。
まずは事実確認をする
炎上した場合にはどのような問題が起こっているのかいち早く情報を収集し、整理していくことが対策を立てる第一歩になります。この作業で時間がかかってしまうと、対策がどんどん後手に回る可能性があるので速やかに対処していくことが大切です。
炎上した原因は何なのか
自社のSNSや公式HPの投稿だけでなく、ニュース記事などが原因となるときもあります。
炎上した原因を確認し、その事柄に対して事実確認をします。またSNSの投稿が原因であった場合、自社の投稿以外であれば、その投稿が関係者か、外部やなりすましによるものなのかを確認する必要があります。
炎上した理由は何なのか
次にユーザーは何に対して非難しているのかを確認します。
「差別的な内容」「隠ぺい工作」「ハラスメント」「不祥事」など様々な事柄で炎上は起こりますが、今回、非難されているのはどのような理由で炎上しているのかを調査し、非難の内容を検討していきます。
情報を集約する
上記2点の情報を集約して、今回の炎上の正体を把握する必要がありますが、担当者だけで対応していると時間がかかってしまいます。いち早く対策を立てるためにも各関係の部署毎に情報を集め、それを集約し、偏らない分析する部署及び責任者を決めておくことをお勧めします。
そしてこの「いち早く」というのは数日を指すのではなく1日程度である程度の情報を集約することをお勧めします。
どのように企業としての姿勢を見せるか
ある程度、情報を収集したぐらいから企業としてどのような発表をするかを検討します。
これは炎上してから遅くても2日以内には企業としての姿勢を見せておきたいものです。
「お詫び」で全て解決するのか
早く対応をしなければいけないという気持ちから「お詫び」を表明することをしてしまいがちですが、「お詫びをすれば許される」という姿勢と受け取られ場合によってはさらに炎上させてしまう可能性もあります。
個人情報の漏洩など明らかに「お詫び」に値するものは別として、「お詫び」が適当かどうかはその都度検討する必要があります。
ただ中々、情報が複雑に入り組んでいるような炎上であれば、事実の確認が終わるまで何も表明しないことも問題となるので、ひとまず「世間を騒がせたこと」や「不快な思いをさせた人がいること」に対してのお詫びと、事実を確認中で今後の対策を検討中であり、決まり次第お知らせする旨を表明するという2段階の方法を検討した方がいい場合もあります。その時には最初の表明で何に対しての「お詫び」なのかを明確に示すことが大切です。
公式HPなどへの掲載では済まない場合
重大な案件に対しては「お詫び」の文章では十分でないことがあります。その時には公式HPに一旦何かしらのアクションをした後に、記者発表の場を設定する必要が出てきます。
記者発表もいち早く開くことが大切になり、さらにFAQの作成、記者発表の出席者の選別(企業のどの立場の人物までを出席させるのか)など多くの作業が必要になります。
記者発表は「お詫びの文章」の掲載という一方的なものでないだけに短い時間であらゆる状況を想定し、正確に対策を立てる必要がある難しい作業となります。
投稿をすぐに削除は得策ではない
最初に思いついてしまうかもしれませんが、炎上したSNSの書き込みをすぐに削除するということは避けなければいけません。削除をするということは「隠ぺい」と取られかねない上に、さらに炎上を複雑なものにしてしまうからです。
かといって名誉棄損にあたる内容やセンシティブな投稿を残し続けるのもよくはありません。公式HPなどで「お詫び」など一定の企業としての姿勢を示した後で、該当の個所を削除した旨を表示するようにします。
事実無根の第三者の非難の投稿に関しては削除依頼をする
第三者による自社にとって身に覚えのない内容の投稿から炎上してしまうケースもあります。
投稿者の勘違いによるものから故意に悪意をもってデマの投稿をするものなど内容は色々ですが、「デマだし、アクションを起こすと余計面倒なことになりかねない」と判断しそのままにしておけば、予期せぬ方向に広がってしまい手が付けられなくなることがあります。
自社に落ち度がない否定的な投稿に対しては場合によって専門の機関に投稿の削除を依頼するなど、悪質な投稿に関してはしかるべき対応をすることが望ましいです。
合わせて自社のサイトやSNSなどで「事実と異なる」ということはっきりと示したおくことが大切です。
とにかく早く動くことが大切
炎上は時間が経てば経つほど、当初の原因とは違うあらぬ方向へと広がっていく可能性もあり、そうなればますます炎上が収まりにくくなります。
運営担当者も人であればいくら職務とはいえどこの誰かもわからないところから誹謗中傷の言葉を聞かされていれば、疲弊していき冷静な判断も難しくなっていきます。
また早く終息させたいがためにやみくもに「お詫び」をすることも時として問題を大きくさせることになります。
炎上が起こった場合に一番に考えることは「正確な情報を迅速に」集めることです。
この初動の情報の収集の状況によって事態は大きく左右されることを関係者だけでなく普段から企業として情報のいきわたる風通しのよい環境づくりを心掛けておく必要があります。
炎上の防止対策
炎上は起こってしまえばたとえ収まったとしても何事もなかったようにすることはできません。
ネットが普及する以前なら過去の世間から非難を受けた事象を探すことは残っている資料やニュース記事を探すという手間を掛けなければいけませんでした。しかしネットが普及した現在では、検索をすれば簡単に過去の事象を確認することができます。
こうなれば完全になかったことにすることは難しくなるので、できれば炎上を未然に防ぎたいものです。
それでは炎上を未然に防ぐにはどのような対策が必要でしょうか。
SNSの書き込みを常にチェックする
炎上は起こってからしか対応ができないのでしょうか。
炎上は一気に広がることが多いため、火種の全てに対して事前の対策を立てるのは難しいですが、予測を立てることは可能です。
企業内で担当者を決め、常時、自社に対しての書き込みをチェックします。否定的な言葉で書き込まれているものは、自社のどのようなSNSの書き込みに対して行われているかをチェックし、その書き込み事態を改善していくように検討をしていきます。
また検索の機能を使って常時確認する方法もあります。
専門の会社などもありますが、下記の方法を利用すれば自社で費用をかけずに監視することも可能です。
参照:自社で無料で行うSNS監視。おすすめツールや運用方法も紹介|アスピック (aspicjapan.org)
Yahoo!リアルタイム検索
Yahoo!の検索機能を利用してTwitterの投稿を監視します。
直近から過去30日まで遡ってキーワードを投稿を確認することができます。
Twitter検索
Twitterには通常画面に表示されている検索だけでなく「高度な検索」をすることができます。このTwitterの検索機能を利用すれば投稿されたほとんどのツイートが確認できます。
30日以上前の投稿も検索することができ、ANDや除外、日付、アカウントの指定も可能で、Yahoo!では拾いきれなかった投稿も検索することが可能です。
Google アラート機能
Googleにあらかじめキーワードを設定しておくとそのワードを含んだ投稿があれば都度メールが送られてくるので確認することができます。このアラートにはツイートなどは含まれず、ニュース記事に関するものを確認することがほとんどになります。
これだけでは完全に監視をすることは難しいですが、3つの機能を複数で利用することである程度は状況を把握することができます。また5ちゃんねるなども検索をしていくことが必要ですが、このような掲示板には否定的な内容ほど検索されにくい隠語を使って投稿されていることが多く、単純な検索だけでは把握しきれないことがあります。
マニュアルの作成
マニュアルは下記のような要素を検討して作成されることが望ましいと思われます。
作業手順
マニュアルの基本的な要素です。
人的な作業のミスで誤って投稿されたものが炎上してしまった事例も多くあるので運営担当者が単純なミスを起こすことのないようしっかりと手順を示しておきます。
投稿内容の基準を決める
運営担当者の独自の判断のみで投稿をしてしまうと、やはり偏りが出てしまうことは確かです。
個人のアカウントの投稿ではないので投稿する内容などのルールを作成し、企業のイメージを損なわない投稿内容であることが大切です。また、企業のアカウントで個人の投稿に対して「いいね」をする企業も増えていますが、この「いいね」をする基準も設けておく方がいいでしょう。
複数の目線で確認をする
投稿前に責任者の承認を得て投稿する企業や、運営担当者に投稿が任されている企業など投稿までのルールは様々ですが、どちらのルールで運用していても、一定の期間を決めて複数の視点で投稿を確認していく方が、より安定した内容に繋がるようになります。
炎上した時の対策を決めておく
炎上した時にはどのような流れで情報を収集するのか、炎上を発見した際の連絡経路は明確になっているか、複数の部署等で対応する場合でも最終的な状況の集約をする担当部署と責任者をあらかじめ決めておくことが大切です。慌ててしまうとどうしても指示系統が曖昧になりかねないので、日ごろから意識しておくようにします。
社員の研修を定期的に実施する
炎上した事例の中には社内の人間の投稿によるものが多くあります。
誤って投稿してしまったものや、匿名だからと自身の会社を誹謗中傷する書き込みをしたり、社内で知った情報を投稿したりと内容は様々です。
まず匿名の投稿であっても特定することが可能であることを周知させる必要があります。また有名人に関連する個人的な内容で、否定的な投稿ではなく、肯定的な投稿であればいいと考えてしまう人もいますが、肯定的なものでも個人的な内容であればそれは情報漏洩になります。
完全に無くなることが難しいのが内部の投稿ですが、少しずつルールを浸透させていくことは大切なことです。
炎上した事例を検証する
残念ながら炎上は年々増加しており、大小多くの炎上の事例があります。
このような過去に起こった他社の事例を踏まえて自社の対策に役立てることもできます。どのような投稿が炎上につながったのか、炎上した企業はどのような対応をしたのか、またそれが炎上を押さえるのに効果的な方法だったのかといったような事柄を中心に情報を集めておく必要があります。
この場合、自社と業種が違っていても参考になるので幅広く情報を集めていく方がいいでしょう。
クレームを把握し検証する
SNSに投稿するのではなく、お客様から直接クレームや問合わせを受け付ける部署の担当者と情報を共有することも必要です。
クレームを分析していけば、自社に対して世間の人が持っているイメージを把握することができるので、炎上する前に火種を見つけることができます。世相が変われば同じことでも人が感じることが違ってくるので、情報の共有はある程度、短い期間で共有することをお勧めします。
まとめ
炎上には「炎上商法」という言葉もあるように敢えて炎上することを利用して利益を得ようとする人もいます。また、宣伝などであれば「心に引っかからない」宣伝はある意味では効果をなさないものという考え方から、炎上を覚悟の宣伝方法をとることもあります。人にとって楽しい事だけでなく怒りも印象に強く焼き付けられるからこそこのようなものが存在するのかもしれません。
ただこの「炎上」によって命を落とす人がいたり、企業でも経営が続けていくことができない状態に陥ったりすることがあります。自身の意見が手軽に多くの人に伝えることができるSNSは便利で楽しいものである反面、その匿名のもつ凶暴性でこのような悲しいことが起こってしまうことも事実です。最近では悪質な誹謗中傷に対しては法的な措置も検討されていくようになりましたが、まだまだ無くなることのない「炎上」に対してはまずは自社を守っていく対策を立てていくことが大切です。
SNSは企業にとっても新しい情報発信のツールとしてこれからも活用していきたいものであるからこそ、しっかりとしたルールに則って有効に運用していきたいものです。