新型コロナウイルスにより、世界を取り巻く状況は一変しました。ソーシャルディスタンスが当然になり、テレワークも浸透しています。こうした中でも経済は動いており、企業では広告宣伝費を削減しながら、新しい形態の広告を模索しています。自宅にいながら行えるオンラインショッピングなどに結びつくSNS広告も主流になりつつあります。費用対効果の高いSNS広告の展開方法、広告費削減に結びつく補助金について解説していきます。
コロナが広告業界に与えた影響とは
新型コロナウイルスが、日本の経済に暗い影を落としています。直接に影響を受ける飲食、観光などの業界はもちろん、直接はコロナと関係のない製品のメーカーにも影響が出始めています。取引先を営業訪問できない、取引先の売り上げが落ちている、社員がテレワークで仕事の効率が上がらない、などの理由があると思われます。そこで、企業の経費も削減されつつありますが、真っ先に削られる対象にあがるのが、費用対効果がなかなか目に見えてこない広告·宣伝費です。広告業界ではこうした中で、メディアの取捨選択などの対策を迫られているようです。
昨年と同期と比べて広告宣伝費が減少
Grillは、企業のマーケティング·広告·広報担当者334人に対し、新型コロナウイルスの影響により、2020年4月の企業の広告宣伝活動がどのように変化したか、の調査を実施しました。
それによりますと、64%の企業が昨年同期と比べて、広告宣伝費が減少したと答えました。また、30%が変化なしで、7%は逆に増加したということでした。
減少したと回答した企業にその減少割合を聞いたところ、広告宣伝活動が全部止まったと回答した企業が32%で、昨年同期に比べて半分以上減少した企業が86%でした。
小規模企業ほど影響大
同じく4月の広告宣伝費は、企業の売上規模で見ると、売上規模が100億円以下の企業では、約30%の企業が広告を全部停止しており、売り上げがもっと大きい企業に比べて高い割合だったそうです。
さらに、売上高1,001億円以上の企業を見ると、広告宣伝予算の減少幅が少ない傾向が見られました。
2020年下半期の広告出稿量は回復
もう少し後の調査では、アイズが運営する媒体資料ポータルサイト「メディアレーダー」がメディアレーダー会員225人を対象に実施した調査結果を7月に発表しています。
これによりますと、広告宣伝費が「減少した」会員が、4-6月については70%でしたが、7月以降については9%と大幅に少なくなっています。
2020年上半期に比べると、下半期の広告出稿量は回復しつつあるといえます。
インターネット広告は、他の広告より影響小
また、この調査では、ネット利用についても質問しており、「広告·マーケティングに関する情報収集については91%、「商談·会議」については69%の方が、ネットを利用したオンラインで行っているそうです。
4-6月の広告宣伝費についてですが、大きく減少したのは、「インターネット広告」が21%、「それ以外」が43%、「どちらも同程度」が36%となり、コロナ禍でもインターネット広告への影響は、他の媒体の広告に比べると軽くて済んだようです。
インターネット広告の費用対効果や効果的な運用方法の記事も、ご覧ください。
広告長期停止は企業へのダメージが大きい
サイカでは、企業の広告宣伝担当者320人に対して、新型コロナウイルス第2波がマーケティング活動にもたらす影響実態調査を実施しました。
新型コロナウイルスの感染者数が増えている時期を、2020年4月·5月を「第1波」、7月以降を「第2波」とし、それぞれについて企業の動向を探りました。
広告の出稿状況については、第1波の時期は「すべての広告出稿を止めた」が16%、「大半の広告出稿を止めた」36%と、半数以上の企業が広告出稿を停止していました。
第2波の時期を見ると、「すべての広告出稿を止めた」が13%、「大半の広告出稿を止めた」が27%と広告出稿がやや持ち直しています。
第2波において第1波よりも広告出稿を減らさなかった理由については、「第2波での消費行動の停滞は第1波に比べて限定的であると見越しているため」が41%と多く、以下「広告出稿を長期的に停止することによる中長期的なブランドへのダメージが大きいと判断したため」37%、「第1波のときに広告出稿を停止したことによる事業へのダメージが大きかったため」35%と続き、第1波の時ほど、広告を減らせない事情が浮き彫りになっています。
コロナで広告はどう変化していったのか?
コロナの影響が長引くにつれて、広告の内容、形態は徐々に変化してきました。その変化について分析していきます。
オンライン広告への影響
上記のGrillの調査によりますと、SNSなどのオンライン広告の広告宣伝活動費が半減以上と回答した企業が81%、テレビCM、新聞、交通広告などのオフライン広告が半減以上の企業が87%となり、オフライン広告の方が、オンライン広告よりコロナ禍で受けた影響が大きくなっています。
ソーシャルディスタンスや自宅での画像を使用
デジタルコンテンツを提供しているGetty Imagesが「新型コロナウイルスのパンデミックが再形成する新しい社会のビジュアル」をテーマにして開催した会議で、広告やビジュアルがコロナ禍においてどのように変化したかについて解説しています。
WHOによるパンデミック宣言が出た3月から4月は、ソーシャルディスタンスを意識した写真などを使用し、消費者の共感を呼ぼうとした企業が目立ったそうですが、ロックダウンが浸透してきた5月ごろには、屋外での接触を避けて自宅にて撮影された写真を使用したものや、イラスト、アニメを活用した広告が増えてきたようです。
男性がテレワークで家事・育児を手伝う画像
コロナ禍により、テレワークなどライフスタイルが大きく変化したことで、広告に載せる内容も変わってきました。さまざまな世代、人種の方がマスクをしている写真·イラストや、家庭内で勉強する子供のすぐ横で、テレワークを行う親の映像·画像、男性が家事や育児を手伝うイメージ画像などが好評を博しました。
こうした内容のネット広告は、日本でも、検索数が増えるなど、一定の効果が見られたようです。
ライフスタイルの多様化に合わせて広告も変化
家事を楽しむ共働き夫婦を描くなど広告画像、映像が変化してきているのを考えますと、コロナ禍によりライフスタイルが大きく変わったのを反映しているようです。ライフスタイルは今後さらに多様化すると思われますので、広告·宣伝、マーケティング活動においては、多様性を意識することが重要になり、多様化した広告が増えるでしょう。
リアルな広告からデジタル化した広告へ
コロナ禍が続く限り、当面は広告予算の削減が進むかもしれませんが、ユーザーとのコミュニケーションは続ける必要があり、デジタルトランスフォーメーションの推進などにより、リアルな広告からデジタル化した広告へのシフトが進んでいくでしょう。
今後SNS広告が重要になる?
コロナ禍により、外出をためらうようになると、実店舗にショッピングに行くより、オンラインショッピングの方が手軽で安全に楽しめます。こうした動向に対応するため、インターネット広告、特にSNS広告が重要になってきます。
広告や商談はweb領域へ
上記しましたように、アイズの調査によると、4-6月のインターネット以外の広告を減らした企業は、インターネット広告を減らした企業に比べて2倍以上あります。
商談や会議もオンラインで行われることが多く、広告や商談については、web領域へシフトすることが必要不可欠になりつつあります。
SNS活用・SNS広告に投資
製品·サービスのマーケティング活動を推進するアジャイルメディア·ネットワークが、企業のマーケティング責任者·担当者159人を対象に実施したアンケートによると、投資を拡大した、または拡大予定·関心の高い取り組みとしては、ネット、デジタル関連のSNS活用·SNS広告が57%、eコマースが35%、オウンドメディアが34、動画活用が33%と上位を占めたそうです。
各SNSの費用とメリットも、確認しておくと良いでしょう。
SNSを活用し、オンラインショッピングにシフト
具体的にみると、コロナ影響下により、若年層だけでなく、高年齢層もリアルな実店舗から、外出自粛と合わせて人と接する必要がないオンラインショッピングにシフトしているようです。特にオークションなども含めて巣ごもり消費として、娯楽品の売り上げが伸長しています。
日常生活に必要な食品、生活用品はもちろん、娯楽品を購入する時に、他人の動向を知るためにSNSを活用し、SNS広告を参考にするケースが多くなっています。
新しい形態のSNS上に広告を展開
モバイル画面共有アプリ:Squad
また、モバイル画面共有アプリの「Squad」がテレビや映画を一緒に見ながら友人とリモートでおしゃべりができるサービスを展開するなど新しい形態のSNSが登場してきました。
これらの新しいSNSに付随して、SNS広告を展開すると、新しもの好きなユーザーに対し、一層の広告効果が現れてきます。
SNS広告をコミュニケーション活動の中にも取り入れる
ショッピング関連では、友人と一緒にeコマースでバーチャルショッピングが楽しめる「Squadded Shopping Party」というサービスも現れました。
オンラインにおけるこれらの人間味あふれるコミュニケーション活動に注目が集まっていますので、SNS広告を展開するときには、候補の一つとしてチェックしておきましょう。
広告費用が補助される補助金がある
コロナ対策として、さまざまな助成金、補助金が新設されていますが、広告などの販売促進活動に関して補助されるものもあります。
令和2年度補正予算で計上された「小規模事業者持続化補助金」です。これについて解説していきます。
小規模事業者の生産性向上と持続的発展が目的
小規模事業者と一定要件を満たす特定非営利活動法人が、今後複数年にわたり制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など)などに対応するため、取り組む販路開拓などの経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者の生産性向上と持続的発展を図ることを目的にしています。
つまり、広告などの販売促進やIT活用の取り組みに対して、かかった費用の最大3分の2の補助金が受けられるという制度です。新型コロナ感染症対応「特別対応型」の持続化補助金の場合が最大100万円、それ以外の持続化補助金が最大50万円となります。
補助対象は小規模事業者
補助対象は、商業·サービス業の場合、常時使用する従業員の数が5人以下、サービス業のうち宿泊業·娯楽業は常時使用する従業員の数が20人以下、製造業その他の場合、常時使用する従業員の数が20人以下の小規模事業者となります。
広告作成・出稿や、チラシ作成などが対象
販売促進やIT活用の取り組みとは、広告作成·出稿や、チラシの作成·送付、ホームページ作成などのことです。
また、下記の①と②の条件をどちらも満たす必要があります。
①「サプライチェーンの毀損への対応」、「非対面型ビジネスモデルへの転換」、「テレワーク環境の整備」のいずれか一つ以上の投資に取り組むこと
②持続的な経営に向けた経営計画を策定していること
経営企画書、補助事業企画書を作成
申請にあたっては、申請様式を下記HPからダウンロードします。
経営計画書、補助事業計画書を作成し、補助金事務局へ送付します。
審査を受けたあと、採択、不採択が決定します。
採択が決定したら、該当事業に対して補助金が交付され、報告書を提出する必要があります。
ただし、令和2年度分小規模事業者持続化補助金につきましては、締め切られていますので、HPをまめにチェックして、次年度の補助金を待ちましょう。
具体的な取り組み例
実際に補助の対象となる取り組みとしては、
新商品を陳列するための棚の購入、販促用チラシの作成·送付、商品のPR(マスコミ媒体での広告、webでの広告)、オンラインショップの開設、展示会·見本市への出展、新商品の開発、新商品の開発にあたっての図書の購入、専門家からの新商品開発に向けた指導費、店舗改装-などで、かなり幅広いものが認められています。
ただし、不動産の購入などは認められないようです。
配色の参考になるサイト集
コロナ禍の中で世間に大きな影響を与えたり、ブランド向上に結びついたサイトを紹介します。
NIKE
NIKE:Play for the world
NIKEの「Play for the world(世界のためにスポーツしよう)」というウェブ動画です。
自宅で楽しみながらも激しくスポーツをする人を、モノクロの現実的な映像で紹介し、コロナ禍で巣ごもりしている人に、同じようにスポーツすることへの希望を与えました。
大塚製薬
大塚製薬:ポカリNEO合唱
大塚製薬ポカリスエットの「ポカリNEO合唱」のCMです。「今はみんなで会えないけど、歌は歌える」というテーマで、コロナ禍の新しい日常生活を表現しています。
集団で合唱できなくなってしまった中高生たちが、自宅で歌うところを自撮りした映像が次々と現れ、元気を与えてくれます。「乾きを力に変えてゆく」というメッセージが、巣ごもりで外出できない人々の共感を呼んだようです。
日本航空
日本航空:ラグビー日本代表チーム応援キャンペーン
日本航空(JAL)がラグビーイベントに合わせて、ラグビー日本代表チームを応援するキャンペーンを展開しました。ラグビーにそれほど詳しくない人々でも楽しめるストーリーの広告で、1,000万人以上に訴えたそうです。
スポーツイベントは盛り上がり、JALのブランド向上にも結びつきました。
Panasonic store
パナソニック:Panasonic Storeショッピングサイト
Panasonic Storeはパナソニックのショッピングサイトです。コロナ禍の中で、リアルな家電販売店に行くお客が減っているために、メーカー自身がサイトを設置しました。
シンプルながら、必要な情報を適度に配置したスマートなデザインのサイトです。
web限定商品の販売や、自分好みの仕様を選べるカスタマイズモバイルパソコン、パナソニック新商品のモニター販売などメーカーならではのコンテンツも盛りだくさんで、販売促進に結びつきそうです。
趣味なび
コロナによるテレワークの浸透で通勤時間が浮き、趣味にはまる人が増えています。そこで、趣味やオンラインレッスンを探すのに役立つのが「趣味なび」です。
全国18,000を超える教室·ワークショップを掲載中で、さまざまなレッスンの画像などが視覚に訴えてきます。
先生が販売している書籍、作品などを紹介する「趣味なび STORES」などもあり、眺めているだけで楽しめます。
新型コロナウイルスが劇的におさまらない限り、「ウイズコロナ」を常に頭の隅に置きながら、広告戦略を考える必要があります。
従来からの、TV、新聞、雑誌への広告は、新聞折り込み広告なども含めて、コロナに関係なく曲がり角に差しかかっていました。
コロナにより、さらに状況が一変し、「アフターコロナ」まで視野に入れながら、新しいマーケティング活動を考えていかなければなりません。
自宅にいながら、自撮り映像でお互いに一体化するような「人間らしい温かみのあるコミュニケーション」をポイントに、SNS広告を展開していきましょう。